研究成果がBioorg Med Chem誌に掲載されました (理科大・河村くん)

HMG-CoA還元酵素の分解を誘導する低分子化合物に関する研究成果がBioorg Med Chem誌に掲載されました。東京理科大学理工学部応用生物科学科(倉持研究室)の修士2年 河村幸汰くんの研究成果です。この論文に出ている化合物だけで、学部4年から修士2年までの3年間で合成した26化合物 (計85反応)あります。河村くんはそのほぼ全ての化合物の合成と培養細胞を用いた活性評価を行なってくれました。お疲れさまでした。

HMG-CoA還元酵素はコレステロール合成経路の重要な1反応を担う酵素で、スタチンと総称される薬剤はその触媒活性を阻害し、血中コレステロール低下作用を示します。この研究で扱っている化合物は、この酵素自体の量を減らす(=酵素の分解を誘導する)という変わった作用を持っています。研究室としてこのような変わった活性のメカニズムなどにも興味を持っているわけですが、今回の研究ではこのような変わった活性を持つより優れた化合物の探索を進めました。

ピリジン環(や他の含窒素ヘテロ環)に対して系統的に置換基を導入して構造活性相関を調べるのはなかなか大変ですが、改良型Minisci反応(ラジカル反応の一種でヘテロ環のC-H結合にアルキル基を導入できる反応)をうまく活用することで、効率的に誘導体の合成を進めています。

また誘導体合成の過程で、(ペル)フルオロアルキル基のピリジン環へのラジカル反応による導入について、お茶大化学科の矢島研・佐藤千花子さんが検討をおこなってくれました。ありがとうございました。結果的には、電子不足なヘテロ環に対して電子不足なペルフルオロアルキルラジカルを直接導入するのは簡単ではなく、この研究ではヒドロキシル基を後からフッ素に置換するという合成経路を採用しました。

論文は下記リンクから読めますので、ぜひご覧ください。

大金

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Bioorg Med Chem誌のページ (有料 / 所属機関の契約が必要です): https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0968089622005387

Bioorg Med Chem誌ShareLink (2023.2.16までは無料で最終版にアクセス可能) https://authors.elsevier.com/a/1gKCd3S7Zk1yQB

プレプリント版 (無料で見れる著者原稿です): https://ssrn.com/abstract=4285357

グラフィカルアブストラクト (Kawamura et al., 2022 Bioorg. Med. Chem.)